以前、『犬神』という漫画を読みました。表紙に惹かれて。(だって頭に角が生えた狼さんなんだもの~可愛かったんだもの~)
内容は――
グロテスク。
凄いですよぉ。人が死にまくりですよぉ。それも尋常な死に方じゃない。あまりにも残酷な描写なので、ここではあえて書きませんが。
物語自体は、少年と犬との心の交流を描いたもの(なんかちょっと違う…)。
孤独を愛する少年・史樹は、今では使われていない工場の廃墟を秘密基地としてアレンジし、放課後はそこで自分一人の世界に浸ることを好んでいた。だがあるとき、その廃墟に謎めいた大型犬が現れ、驚いた史樹は慌てて逃げようとするが、続いて現れた巨大な猫の化け物に襲われかけたところを、その犬によって救われる。犬は、なんと史樹の知る普通の犬ではなかった。人語を理解する高い知能を持ち、さらに頭から角が生えるのだ。史樹は、犬の耳に「24」という数字が刻まれているのを見つけ、以来犬を「24」と呼び、言葉を教えながら友情を育んでいく。
史樹の呟いた言葉を暗誦することしかできなかった24が、しだいに言語を覚え、史樹と会話を交わすようになる。24は史樹を慕い、史樹も24を可愛がるが、24自身の宿命と人間社会に迫りつつある「犬神」の存在が、史樹と24から平穏でささやかな日々を奪っていく――。
24が現れた日から、史樹の周囲では奇怪な出来事が次々と起こります。怪物化した猫やネズミ、虫――実はそれらは、24の遺伝子から誕生した「犬神」の禍つ物なのですが、それらは人々に牙を向け、襲いかかります。24は史樹の為、それらと戦う決意をするのですが、彼と対峙するものの中には、彼と同じ「人間社会を監視する」という使命を背負ったもう一体の犬神・ゼロ(これは額に0という数字が刻まれている)もおり、24は犬神でありながら他の犬神とは違う道を歩むことになるのでした。
24の無限に再生していく細胞から不死のヒントを得ようと奔走する生物学者や、24を手に入れて神になろうと目論む謎の男・桐生の暗躍――「クロウリーの24」からヒントを得たこの物語は、「果たして人間社会はこのままで良いのか?」という問いを読者に投げかけます。
それにしても、本当に惨い――実験の為に飼い主のもとから連れ去られ、犬神の細胞によって怪物化してしまったラッキーや、監視者としての使命を背負う24やゼロとは違い、彼らが人間に対して抱く憎悪に反応して人間社会を攻撃しだす犬神エイト――それらとの戦いは熾烈を極め、24は何度も傷つき、史樹もまた24を追って傷ついていきます。
グロテスクな描写が多く、犬神がちょっと動くだけで大勢の人が死にます。
でもそうした惨さの中で、24と史樹は友情を育み、互いを守る為に戦うのです。
好きなシーンは、第一話で史樹を守り傷ついた24が、倒れたまま史樹の呟いた言葉を暗誦するところと、史樹と美伽24が束の間の平和を満喫して水浴びをするところと、史樹とエイトが一瞬心を通わせかけるところと、ゼロが史樹に心を許すところと、ラスト。――とは言え、あの終わり方はかなり無理矢理すぎた気がします。だって、日本が滅びちゃったんだもの。日本人の中で生き残ったのは、たったの7人――(外国在住の日本人や旅行中の日本人を除いて)。「こんな展開ありかよ!?」と叫びたくなりました。
科学的で難解な内容ではありますが、科学と神秘とを結合した面白い設定でしたよ。最後の最後で史樹が神様になってしまうってところは、かなり納得できませんでしたが。
人間の汚い部分を指摘しながら、子供と犬の心の触れ合いを美しく描く――人間社会の表裏を描いた作品だと思いました。
希望ある若者達までも一気に死なせてしまったという点は納得できないですし、途中からいきなり教訓めいた物語に展開してしまったという点も気に食わないのですが、それでも結構好きな作品です。24が可愛い。ゼロも可愛い(殺人犬ですけど、ひねくれたところが好きだなぁ…)。
急展開するどころか物語の方向性が大きく変わっちゃった点も、ある意味楽しめるかもしれません。グロテスクなシーンに強い方には結構オススメですよ。