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2024/05/21 01:31 |
久々に真面目な話題だなオイ。

かなり時間がかかってしまいましたが、遂に読み終わりました――小野不由美『魔性の子』。
故国と主人とを同時に喪失した高里くん。記憶がないので、使令を制することもできず。周囲で次々と怪異が起き、やがてそれが彼の仕業とされて、「祟り」という言葉が飛び交う。迫害され怨恨の対象となって居場所を失う彼ですが、それでも彼には自分がそんな目に遭う理由が分からず、為す術もない。どれほど虐げられても麒麟の性質上憎しみを抱くことがない彼の、これでもかというほどの悲劇――『黄昏の岸 暁の天』を読んだ後だからこそ読む前から結果は分かっていたけれど、それでも高里くんの不幸に胸を痛ませないわけにはいかない。

『十二国記』シリーズから独立した形で描かれた外伝です。物語が十二国世界ではなく現代の日本だから、『十二国記』を知らない人にとってもホラーファンタジーとして楽しめます。でも、ただのファンタジーではない。謎が最後まで謎のままで、人間の持つエゴが露呈される作品なのです。読んでいくうちにどんどんその恐ろしさに引き込まれていく。

それにしても、小野主上の文章力には相変わらず圧倒されます。とても描写がリアルで、まるで実際に現場を見てきたかのよう。(んたことはないが) 読み進めていけばいくほど凄惨さが増し、匂いまで漂ってくるよう。
あと、キャラクターや台詞も良いですよね。
最も私が驚嘆したのは、『十二国記』の鈴。多分殆どの読者が共感を持ったのではないでしょうか。共感、といっても良い意味の共感ではありません。人間として誰もが必ず持っている醜さや浅ましさが共通しているということで、それを露わにした鈴に、読者は自分と重なるものを感じ取った筈。現に、いろんなサイトさんを巡ってみたら、かなりいらっしゃいました。認めたくはないけれど鈴と自分とは似ている、という方が。そういう人物をよく描けたなーって思いました。洞察力が鋭いんですね、小野主上は。
『魔性の子』の広瀬もそう。初めのうちは味方だったのに、だんだんと人間としてのエゴを剥き出しにしていく。でも彼を責めるわけにはいかない。

――人が人であることは、こんなにも汚い。(『魔性の子』)

思わずズキーンと来ました。人間の心理を深く深く読み取ったからこそ書ける一文だと思います。
感動した台詞は、『十二国記』に山ほど。もう数え切れません。いつかまたそのことについても語りたいなぁ。

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2006/12/07 19:32 | Comments(0) | TrackBack() | 十二国記

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