勝手に考えてみた――乙女ゲーム版『十二国記』というものを。単なる妄想の産物です。決して世に出ることのない代物です。言うまでもないがな。
『十二国記 ~赫々たる恋道 粛々たる愛道~』(…自嘲)
※乙女ゲーなので、主人公は当然女性。海客(女子高校生)という設定。名前は自由に決められます。
〇序章
部活で帰りが遅くなったヒロインは、夜道を急ぎます。途中で雨が降り出し、どんどん激しさを増していきます。海岸近くまでやって来たとき、突如として嵐に巻き込まれます。そして意識を失うヒロイン。次に彼女が目覚めたとき、そこは雁国の岸辺。彼女は蝕によって蓬莱から流され、海客となってしまったのです。
〇第一章
妖魔に襲われかけたヒロインですが、運良く一人の少年によって命を救われます。いかにも生意気そうな、金髪の少年です。言わずもがな、ボランティア精神溢れる六太です。疲労とショックで再び倒れたヒロインを、獣形で何処ぞへと運ぶ六太。本当に親切な麒麟さんです。
暫くして、ヒロインは目を覚まします。そこはなんと妓楼。突然の出来事に狼狽する彼女は、目の前に現れた男性から事情を説明され、ますます混乱。その男性こそ、尚隆さん。ここで尚隆と六太のボケ&ツッコミを楽しめます。
制服姿では何かと目立つだろうということで、男物の衣装に着替えたヒロインは、六太に連れられて町へ。自分の置かれた状況を漸く把握します。
とりあえず、親切(下心?)な尚隆さんからお金を、海客という立場に心底同情してくれた六太から賓満を借りたヒロインは、いきなり放置プレイ。一人で生きることになってしまいます。でも、ま、お金と使令を貸してもらったことだしね。
さあ、ここからいよいよ遥かなる乙女ゲーが始まるわけです。
〇第二章~
第二章以降は、選択肢によって物語が分岐していきます。自分と同じ蓬莱人が王を務めているという慶国に向かっても良し、同じく蓬莱人が宰輔を務めているという戴国(阿選の乱はなかったことに)へ行っても良し、そのまま雁国に居座って尚隆や六太と親睦を深めても良し。マゾな人は恭国へ、ナルシストな人は範国へ旅立っても良し。これは乙女ゲーですが、なにも男性キャラを攻略するばかりではありません。女性キャラと親友同士になるという展開も楽しめますし、エンディングによっては慶国あるいは戴国で偽王となったり、黄海へと旅立ち蓬山の女仙となったりすることもできます。
さて、ここからは各キャラとのストーリー展開の紹介を。
〇ストーリー展開
・小松三郎尚隆
雁国に居座り、妓楼に通い続ければ親睦を深められます。とりあえず彼の遊びに付き合ってあげたり、彼の冗談に上手く応えてあげましょう。接していくうちに、彼はだんだん心の内を明かすようになります。王としての責務や過去への後悔など――六太にさえ打ち明けられない苦しみを語ってくれます。イベントが進むにつれて、シリアスな面を見せることが多くなってきますが、と同時に彼の度量の大きさも実感できることでしょう。同じ海客なのに、何故こうも立場も考え方も違うのだろう…と、ヒロインは一人悩むことも。後半になって、ひょんなことから彼が実は雁国の王・延だと判明し、すっかり彼と親しくなったとばかり思っていたのにずっと隠し事をされていたのだと気付いたヒロインは、彼のもとから離れようとします。けれどその後を追って来る尚隆――王は結婚できませんが、それでもずっと自分の傍にいて支えてほしい、と尚隆は本心を打ち明けます。
・六太
六太とのエンディングを迎えるには、尚隆を攻略済みということが絶対条件になります。二週目のプレイで尚隆の放蕩っぷりに呆れた六太が妓楼を出ていく際、ヒロインを町に誘います。そこで断れば再び尚隆のルートに、六太と一緒に出かければ六太のルートに入ります。町では六太と仲良くデート。面倒見が良く、物知りな六太に、異世界へ来たばかりで困惑していたヒロインは心慰められます。会話の端々で、どうも六太が妙に年寄りくさい発言をするというのが気になるものの、相手は子供――何故自分はこんな小さな子供にときめくのだろう、とヒロインはときどき赤面したりします。やがてすっかり意気投合して互いに心を許した六太とヒロイン。ふと六太は、物語と称して自分の昔話を語ります。かつて国の命運を大きく揺るがした反乱があったこと、そしてその乱の中で邂逅した友のこと…。尚隆にさえも打ち明けられない心の内を明かしたとき、六太との絆の関は突破です。心優しい六太は、故郷を恋しがるヒロインを何としても蓬莱へ帰してやろうとしますが、その為には再びあの恐ろしい蝕を起こさなければいけません。そのことで尚隆と口論する六太。結局王には逆らえず、自分の無力さに苛まれる六太を、ヒロインは慰めてあげましょう。元気になった六太は、雁国でもヒロインが不自由なく暮らせるようにと、麒麟としてではなく一個人としてヒロインを守ってくれることを誓います。
・朱衡
なんとこの方のルートも存在するのです。恋愛対象キャラかどうかは定かではありませんが。雁国に居座ることとなったヒロインは、妓楼へ通っているうちに尚隆が王、六太が宰輔だということを知ります。ここで尚隆もしくは六太のルートに入らず、真実を素直に受け入れる選択肢をすれば、尚隆により玄英宮への立ち入りを許可されます。客人として王宮に招かれることとなったヒロインですが、作法に厳しい朱衡にいきなり捕まり、たっぷり説教されることに。それでもめげずに通い続ければ、やがて朱衡が気を許し、自分の仕事の手伝いをさせてくれるようになります(単に利用されているだけとも捉えられるが)。そして、ある程度友好度が深まれば、イベント発生。仕事で疲れた朱衡が書類の山の中で居眠りをしちゃいます。起こさず、彼が目覚めるまでそっとしておいてあげましょう。目を覚ました彼が慌てふためくというイベントは見モノです。とにかくそのイベントをこなせば、彼との絆の関は一気に突破。雁国影の支配者でもある彼に片腕として認められ、雁国の官吏として生きる道が拓かれます。
・中嶋陽子
雁国編だけでなく慶国編も存在します。六太から海客の王の話を聞き、興味を持ったヒロインは、いざ慶国へ。しかし道中夜盗に襲われてしまいます。そこで颯爽と姿を現わし、あっという間に夜盗を倒していく赤い髪の少年。ヒロインは思わずときめいてしまいますが、その少年が実は女だと知り、ショックを受けます。ちょっとコメディタッチです。この赤い髪の少女が、陽子です。ヒロインが海客だと知った陽子は、ヒロインを連れていくことにします。とはいえ、今すぐに安全な場所へ行くというわけではありません。陽子は己の足で密かに国中を見て回っている途中なのですから。見聞を広めようとする陽子の手伝いをしてあげましょう。年が近いということもあり、陽子が心を開いてくれます。ここからはちょっとロールプレイングゲームっぽくて、陽子と一緒に悪い奴らの陰謀を暴いたり、悪い奴らを退治したりします。その道中で、陽子を心配してやって来た桓タイと一旦合流します。とりあえずヒロインを安全な所に匿いたいという陽子ですが、ここで陽子と共に行くという選択肢を選ばなければいけません。やがて年頃の少女としての面を見せてくれる陽子。最終的に、陽子は自らが王だと告白し、ヒロインに自分の味方になってほしい、と頼みます。それを受け入れれば、ヒロインは金波宮の女史となって陽子を支え生きていくことになります。
・桓タイ
陽子ルートの途中で合流してきた桓タイと一緒に金波宮へ向かえば、桓タイルートに入ります。このルートでは、金波宮での和気藹藹とした雰囲気を楽しめます。勿論、桓タイだけではなく鈴や祥瓊、遠甫、桂桂、虎嘯、夕暉などのキャラも登場し、家族の一員として受け入れられます。一部の人からは警戒されるヒロインですが、しだいに皆と打ち解けていきます。任される仕事も、雑用から始まってだんだんと重要なものへと変わっていき、ヒロインはこの世界で生きていく新たな道を見出していくこととなります。やがて旅から帰って来た陽子も加え、金波宮のメンバーはますます和気藹藹となります(景麒を除いて)。ですが最後までヒロインに反発し続けていた景麒も、エンディングになって漸くヒロインのことを認めてくれます。ヒロインは、慶国の民となり、自分と同じ蓬莱の女子高校生だった陽子がどのような国を築いていくのかを見守ることにします。
疲れたので休憩。
アニメ版『十二国記』のDVD『風の海 迷宮の岸』下巻、購入致しました。
あのですね…衝動に負けてしまいましてね…。
この前『アラロス』買ったばっかで財政難だっていうのに!なんか頭の中にサンタさんが降臨してきたような感じで、衝動的に買っちゃったわけです、ハイ。(でも金を払ったのは私自身…)
所詮人間は、欲望には抗えない生き物なのさ…ふっ…。
いつまた上巻を買うことになるのか、自分でもドキドキしています。これ以上財布の中をカランッカランにしてどうするってんだ。
饕餮に手こずらされました。
かなり時間がかかってしまいましたが、遂に読み終わりました――小野不由美『魔性の子』。
故国と主人とを同時に喪失した高里くん。記憶がないので、使令を制することもできず。周囲で次々と怪異が起き、やがてそれが彼の仕業とされて、「祟り」という言葉が飛び交う。迫害され怨恨の対象となって居場所を失う彼ですが、それでも彼には自分がそんな目に遭う理由が分からず、為す術もない。どれほど虐げられても麒麟の性質上憎しみを抱くことがない彼の、これでもかというほどの悲劇――『黄昏の岸 暁の天』を読んだ後だからこそ読む前から結果は分かっていたけれど、それでも高里くんの不幸に胸を痛ませないわけにはいかない。
『十二国記』シリーズから独立した形で描かれた外伝です。物語が十二国世界ではなく現代の日本だから、『十二国記』を知らない人にとってもホラーファンタジーとして楽しめます。でも、ただのファンタジーではない。謎が最後まで謎のままで、人間の持つエゴが露呈される作品なのです。読んでいくうちにどんどんその恐ろしさに引き込まれていく。
それにしても、小野主上の文章力には相変わらず圧倒されます。とても描写がリアルで、まるで実際に現場を見てきたかのよう。(んたことはないが) 読み進めていけばいくほど凄惨さが増し、匂いまで漂ってくるよう。
あと、キャラクターや台詞も良いですよね。
最も私が驚嘆したのは、『十二国記』の鈴。多分殆どの読者が共感を持ったのではないでしょうか。共感、といっても良い意味の共感ではありません。人間として誰もが必ず持っている醜さや浅ましさが共通しているということで、それを露わにした鈴に、読者は自分と重なるものを感じ取った筈。現に、いろんなサイトさんを巡ってみたら、かなりいらっしゃいました。認めたくはないけれど鈴と自分とは似ている、という方が。そういう人物をよく描けたなーって思いました。洞察力が鋭いんですね、小野主上は。
『魔性の子』の広瀬もそう。初めのうちは味方だったのに、だんだんと人間としてのエゴを剥き出しにしていく。でも彼を責めるわけにはいかない。
――人が人であることは、こんなにも汚い。(『魔性の子』)
思わずズキーンと来ました。人間の心理を深く深く読み取ったからこそ書ける一文だと思います。
感動した台詞は、『十二国記』に山ほど。もう数え切れません。いつかまたそのことについても語りたいなぁ。