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2024/05/16 00:04 |
ルデト
○ルデト
トラキア族の生き残りで、リュシアスの配下。フィエーラ(サラ)の元婚約者。

婚約者といっても、親同士が決めたもので、当時サラは善悪の区別がつかないほどに幼い子供。トラキア族の親御さん達は、血筋を残す為にマティア×ティナ、ルデト×フィエーラという組み合わせを考えた(マティアとフィエーラは兄妹だから、この組み合わせしか考えられなかったのだ)のですが、ティナはルデトと恋仲になってしまいます。しかし戦争によって二人は引き裂かれ、ルデトはマケドニア軍に捕えられたものの、リュシアスに実力を買われ、忠誠を誓うことに。そのような彼に、トラキアの生き残り達は激しい憎悪を抱きます。かつての恋人ティナさえも――。
寡黙な男・ルデト。必要なこと以外は決して語らず、感情を滅多に表に出さない彼ですが、さすがにリュシアスがサラを連れ帰ったときは驚きを隠しきれなかったでしょう――死んだとばかり思っていたフィエーラが、記憶を失って生きていた。それも、一族を滅ぼした敵であるリュシアスを慕って――。しかしルデトは、リュシアスの度量の大きさを知っています。だからこそ彼に忠義を尽くす覚悟を決めたのです。そして、彼は自らの命運をサラに託します。サラと共に、トラキア人の為の新たな都市を築こうとするのです。しかし運命は彼に対しても容赦なく、ルデトには最も恐ろしい結末が待ち構えていたのでした――。
……鳥ですよ、鳥。鳥にやられちゃったんです。怖いですよ。
鳥葬の前、ティナと言葉を交わすシーンには、思わず泣けます。かつて若い恋人同士だったルデトとティナ。しかし戦争によって引き裂かれ、二人は愛し合う者として触れ合うことがないまま、再びその運命を分かつことに……。
『アレクサンドロス伝奇』の登場人物の中で最も幸せになってほしかった二人です。何故二人は幸せになれないのか…。
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2006/10/02 22:43 | Comments(0) | TrackBack() | その他(小説)
アレクス
○アレクス
本名はアレクサンドロス。マケドニア王の嫡子で、リュシアスの異母弟。後の大王。

この人も好きです。

この人のポジションは、『天は赤い河のほとり』のジュダと酷似しています。王位継承権の持ち主で、母から溺愛され、母の陰謀によって大好きな兄が陥れられるものの、本人にはそうした欲はなく、本当は心優しい――性格は違いますけどね。性格は『遥かなる時空の中で3』の義経さんです(あ、双方ともに実在の人物ですね。ジャンルは違いすぎですが)。
自分の責務に忠実で、実直で、だからこそ鈍感。自分の気持ちに素直になれず、大好きな兄が可愛がるサラという異国の少女に嫉妬心を抱き、やがてサラに惹かれていくものの、どうしてもサラとは口論ばかりになってしまいます。
しかししだいに成長していき、あるときアレクスはサラと共に平凡に暮らすことを夢見ます。しかし彼には、王者となる運命が待ち構えていたのでした。そう、彼は初めからサラとは相容れない存在。最終的には、愛するサラや親友ハミルと敵対し、テュロスを殲滅させます。歴史とは、非情なものなんですね……。
アレクスの母オリムピアスが怖いです。息子を王位につける為ならば手段を選ばないという冷酷な女性ですから。後にカシモフに誘惑されますが、そのポジションは『後宮小説』の琴皇太后と似ていますねー。まぁ、琴皇太后より遥かに活動的で執念深いですが。リュシアスには個人的恨みもあるしね。
王者になる為だけに生まれ、王者としてしか生きていけない運命を背負うアレクス。歴史上では一応勝者ということになるでしょうが、『アレクサンドロス伝奇』の中では敗者だと思います。サラやハミルとは違い、自分自身の運命に屈してしまったという点で。だからこそアレクスだけが、大切な人を喪失しても尚一人だけ生き延び、戦争を繰り返していく……。
もし彼がハミルのように自由だったら、もし彼がサラのように正直に生きて生けたら――と、考えざるを得ません。
それにしても、ハミルとアレクスの関係は危険極まりないですね。立場上、二人は敵同士ということになっていますから。本来ならば一触即発ですよ。しかし、二人は友情を育みます。恋敵だからといって争うことは一切ありません。唯一心を許せる友なのです(だからこそアレクスはハミルにとんでもない質問をするのだが)。

2006/10/02 22:43 | Comments(0) | TrackBack() | その他(小説)
リュシアス
○リュシアス
諸国を放浪する旅人だったが、実はマケドニア王の庶子で、アレクスの異母兄。サラを娼窟から救い出す。

サラやハミルの運命を大きく変えた張本人。悪く言えば諸悪の根源だが、彼の存在なくしてサラやハミルは「本当の幸せ」を知りえなかった――。
このリュシアス、めちゃくちゃ包容力のある人物です。誰からも好かれます(カシモフは例外)。その包容力には、サラもメロメロ。おかげでハミルからは嫉妬されますが、そのハミルさえもいつからかリュシアスに深い信頼を寄せることになります(それでもやはり、ハミルにとっては恋敵。反抗的態度は崩しません)。
ただの放浪癖のあるオッサンかと思いきや、何やら悲しい過去を抱えている模様。かつて陰謀によって失った妻の面影を引きずり、今に至っています。しかし過去に縛られたリュシアスですが、彼がサラを救ったのと同じように、彼もまたサラに救われます。初めのうちはサラのことが危なっかしすぎて放っておけず、守っていたものの、やがてサラを心から慈しみ、愛するようになります(そしてハミルのことも弟のように可愛がるものだから、ハミルにとっては皮肉なもんだ)。
サラを守る為、隻腕となってしまったリュシアス。サラとリュシアスの関係は恋愛感情では説明のできない、不思議な縁によって結びついたもので、まさに「運命」によって巡り会ったとしか思えません。これは同じ作者の『マリア』に登場するフリードリヒとマリアの関係に似ています。恋人や夫婦ではなく、家族や親子、同胞、半身と言った方が正しいのかもしれません。そういう不可思議な関係によって結ばれた人達がこの作者の作品にはよく登場します。
数奇な運命に翻弄され、束の間の幸福さえも無残に奪い去られていくリュシアス。慈悲深く、武人として優れながら争い事を好まない彼は、その性格ゆえに人生を終えることとなってしまいます。
サラがリュシアスの子を身篭ったとき、既にリュシアスは故人となっていました。生きる意欲を失い、自暴自棄となっていたサラを、ハミルが正気に目覚めさせます。リュシィという新たな希望を、リュシアスが若い二人に託してくれた――そう考えると、リュシアスの存在はやはりサラとハミルにとって、言葉では言い表せないほどに大切で、魂によって結びついたものだったのでしょうね。

2006/10/02 22:42 | Comments(0) | TrackBack() | その他(小説)
ハミル
ハミル
準主人公。テュロスで母と共に暮らしていたが、実はペルシア海将メムノンの息子。剣の達人で、幼馴染のサラに恋心を抱く。


好きです。

ええ、めちゃくちゃ好きですとも。このハミル少年のことが。だって、色男やし、強いし、超健気やし、一途だし、意外とおっちょこちょいで笑えるし。
ただ、サラとハミルの恋模様はもどかしいんです。顔を合わせればいっつも口論ばっかりという少女漫画でよく見られるような関係なのですが、人前ではひどく大人びて気丈に振舞っているサラとハミルが、二人きりになると途端に子供に戻っちゃって、喧嘩ばっかりしてしまう。そういう初心なところが可愛いんです。
おまけにこのハミル。本当に本当に、切ないくらいにサラ命。たとえサラが他の男の子を生んでも、ハミルはサラへの想いを貫き通し、幼い頃サラと交わした約束を心の支えに生きています。どれほど美しい女性から誘惑されても拒み、サラと二人きりになってもひたすら我慢――葛藤だらけの人生です。読んでいるだけで何だか泣けてきます。
母と自分を見捨てた父親に対する反抗的態度は、何だか妙に人間くさくて好きです。あと、理性と本能の間に板挟みになってもがき苦しむ様も(でも結局はサラへの愛で本能を抑え込むんですよねぇ…)。幼かった彼が、やがては大人の青年へと成長し、自らの意志で戦い生きていく――それでも彼の目指す先には、いつだって愛しいサラいの姿が……。
サラを守る為に何度も自分の命を危険に晒し続けてきたハミル少年(最終巻では既に少年ではなくなっているのだが)ですが、最後の最後で漸く報われます。ハミル的ハッピーエンドですか。しかし結局、ハミルはサラの為だけに生きていたのですね――まさしく彼らしい結末でした。

2006/10/02 22:41 | Comments(0) | TrackBack() | その他(小説)
サラ

サラ
主人公。本名はフィエーラ。奴隷の身分からテュロスの娼窟に買われた少女。実はトラキア族の頭の娘だったが、幼い頃の戦争で家を焼かれ、家族を失い、記憶までも喪失していた。


元は名家の娘とは言え、一度は奴隷身分に貶められて一般庶民となっていたサラ。その彼女が、リュシアスとの出会いをキッカケに、過酷な運命の主人公へと変貌を遂げていきます。
このサラがモテるモテる――これってネオロマ!?ってくらいに。でも、ネオロマと違ってサラの人生は波瀾万丈。薬物に侵されるわ、ズタボロに傷つけられるわ、命は狙われるわ――と、同情せずにはいられない悲劇的な目に遭わされます。しかし、どのような逆境にも負けないのがサラの強さ。相手がたとえマケドニアの王子(誰とは言わないが)であろうと平気で罵るし、自分の感情には嘘をつかない。そういうサラの天真爛漫さや慈悲の心に、誰もが惹かれます。
後にサラは、リュシアスの子を生みます(その名もリュシィ)。ハミルのことを愛しているくせに、何故他の人の子を生むんだ!?――と、以前は疑問に思ったものですが、今になって理解できる気がします。
ハミルのことは好きだし、リュシアスのことも好き。でも、ハミルへの想いとリュシアスへの想いは、同じ好きでも性質の異なるもの。恐らくサラは、リュシアスに父もしくは兄の面影を求めていたのでしょう。幼い頃戦争に巻き込まれて娼窟に売られたサラには、家族がいません。サラは、自分の力で生きていかなければいけなかったわけで、気丈に振舞っていたのですが、それでも親の愛や庇護を、心の何処かで求めていた。そしてひょんなことで知り合ったリュシアスに、救いを求めます。
リュシアス自身も、サラの不思議な魅力に惹かれ、彼女を心から大切にします。リュシアスと関わることでサラは怒涛の運命へと否応なく巻き込まれていくことになるのですが、サラはどのような目に遭わされても、リュシアスと出会ったことを全く後悔しません。サラにとって、リュシアスは必要不可欠なポジションの人で、「あの人がいたからこそ私は生きていける」という恋愛感情とは別種の、決して揺るがない絆によって結びついていたのです。そしてその絆は、死によって二人の運命が分かつまで二人を繋げていたのでした――。


2006/10/02 22:40 | Comments(0) | TrackBack() | その他(小説)

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